準建材トップランナーなどが後押し、施工品質の向上が進む

原液メーカーの間で、性能を高めた商品を投入する動きが活発化している一方で課題もある。現場発泡断熱材は硬質ウレタンフォームの原液そのものは断熱性能を持たず、現場で吹付けてはじめて断熱材として断熱性能を発揮する。

工場出荷時に製品の品質が担保されている工場生産品と異なり、現場発泡断熱材の断熱性能は施工者の吹付け施工品質の管理状況に左右される。つまり、高性能な商品を使っても施工品質によっては本来の性能を発揮できないケースも考えられるわけだ。

そうしたなか、ポリウレタンフォームの製造・販売を行うメーカーなどで構成されるウレタンフォーム工業会では、原液と施工に関する「品質自主管理基準」をとりまとめている。原液メーカーの原液の品質管理と同時に、施工業者の施工に関する品質管理の仕方なども示した。


建産協やIBECが第三者認定制度を開始
施工時の品質管理を第三者が評価・認定する取り組みも始まっている。

(一社)日本建材・住宅設備産業協会(建産協)では、断熱材の断熱性能について第三者認証を行う「優良断熱材認証制度」(EI制度)を運用しているが、昨年3月に「認証区分C(現場発泡ウレタン施工業者原液事前審査)製品認証審査要綱」と「認証区分C(現場発泡ウレタン施工業者)製品認証審査要綱」を追加。硬質ウレタンフォームの原液の認証に加え、その原液を使用する施工業者が作成した硬質ウレタンフォーム断熱材の断熱性能を認証する。書類審査で熱絶縁工事業などの登録や更新を確認し、現場サンプルが製品表示性能値を満たしていること、品質管理体制に問題がないことなどが確認できた場合、その施工業者が作成した硬質ウレタンフォーム断熱材の断熱性能を認証する。

(一財)建築環境・省エネルギー機構(IBEC)も昨年「現場施工型優良断熱施工システム認定制度」をスタート。吹付け硬質ウレタンフォームなどの施工システムを審査し、一定の水準に達したものを「優良断熱施工システム」として認定する。原液メーカーがマニュアル化している施工方法や管理方法の内容とその周知方法などを評価する。
こうした第三者認証を取得する動きが進むことで、現場発泡断熱材の施工品質の確保が期待される。


建材トップランナーの対象にも
原液に加え、施工時の品質確保に向けた環境が整うなかで、国は「建材トップランナー制度」の対象に、硬質ウレタンフォームを追加する検討を開始した。建材トップランナー制度は、既に商品化されている製品のなかで最も省エネ性能に優れているものの性能値を目安に、それぞれの製品ごとに目標基準値を定め、目標年度以降にその基準値のクリアを事業者に求めるもの。

同制度の対象に硬質ウレタンフォーム断熱材を加えることについては、経済産業省の総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 省エネルギー小委員会 建築材料等判断基準ワーキンググループで検討が行われてきた。昨年6月に最終とりまとめ案を発表している。現場で吹付ける硬質ウレタンフォーム断熱材の場合、断熱材として性能を得るのは吹付け後の状態だ。そのため、断熱材の製造者は原液メーカーではなく施工業者になるが、施工業者は吹付けの施工品質の管理は行うが、原液の成分改善による性能向上には関与できない。一方、原液メーカーは原液の成分改善による性能向上に取り組んでいるが、建材トップランナー制度の対象は断熱材の製造業者となるため、断熱材ではない原液を建材トップランナー制度の対象にすることはできない。

そこで、現場吹付けの硬質ウレタンフォーム断熱材については、「準建材トップランナー制度」を導入することにした。建材トップランナー制度のように、省エネ法に基づく勧告や公表、命令などはできないものの、目標基準値などを公式に設定し、性能改善を促していく。対象となる材料は、JIS A 9526で規定されているA種1、A種1H、A種2、A種2H、A種3。対象事業者は硬質ウレタンフォームの原液メーカーとした。

最終とりまとめ案では、現場吹付けの硬質ウレタンフォーム断熱材に関し、JIS A 9526に規定する熱伝導率の値を実際に確保するため、原液そのものの品質管理のほか、施工時の品質確保も求めている。

現場発泡断熱材が躍進 性能・施行品質の向上で競争力増す Part 1
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熱伝導率0.026W/m・Kの優れた断熱性能を発揮

daukako.jpgダウ化工は昨年4月に「スタイロスプレーフォーム R」を発売し、現場発泡断熱材分野に参入した。HFOを発泡剤に採用し、発泡倍率を抑えて高密度化を図った。JISA 9526のA種1Hに相当し、熱伝導率0.026W/m・K以下の優れた断熱性能を発揮する。

同社は押出発泡ポリスチレン断熱材では40%のシェアを持つ国内最大手。住宅分野でも外張断熱工法により「スタイロフォーム」を展開している。

ただ、ZEHなど高断熱な住まいづくりが求められるなか、外張断熱工法による「スタイロフォーム」だけで性能を高めようとすると、断熱材が厚くなり、敷地面積に影響してしまう。

リフォーム市場の拡大が見込まれるなか、スタイロフォームのようなボードタイプの製品では施工が難しい場面も出てきていた。例えば、既存住宅の天井などの断熱施工では現場で吹付ける現場発泡断熱材の方が施工しやすいという。
同社では、まずはZEHなどの高性能住宅に取り組むビルダーなどに、優れた断熱性能を発揮する「スタイロスプレーフォーム R」の提案を進めていく方針だ。

同社によると、発泡剤にHFOを採用することで断熱性が高まるだけでなく、湿気も通しにくくなるという。

水を発泡剤とした従来品(A種3)の場合、断熱材内部の結露防止のため、室内側に防湿シートなどを施工する必要があるが、「スタイロスプレーフォーム R」は湿気を通しにくいため、この工程を省くことができ、施工を簡略化できる。

スタイロフォームによる外張断熱工法の展開で、壁体内結露の対策も含め高気密・高断熱住宅の知見やノウハウを蓄積していることが当社の強み。スタイロスプレーフォームRの提案に活かしていきたい考え。

BASF.jpg昨年秋にHFOを発泡剤に用いた「フォームライトSL‐50α」を発売したのがBASF INOAC ポリウレタンだ。

従来の水を発泡剤に使用した商品「フォームライトSL‐100」と比べ発泡倍率も抑え高密度化したことで、断熱性能は35%向上。JISA 9526のA種1Hに相当し、熱伝導率0.026W/m・K以下の性能を持つ。

戸建住宅向けとして「S L-100」とともに展開。「SL‐50αは、ZEHなど高性能住宅に向けて提案していきたい」(フォームシステム 第1事業本部 スプレー事業部 西日本営業課 安形紀人課長)としている。

現場発泡断熱材のマーケットが拡大する一方で、原液メーカー間の競争も激しくなっている。

「価格競争に陥らないためにも、他社との差別化が図れる高性能なSL‐50αなどの付加価値の高い商品の提案に力を入れていきたい」(同)としている。

日本アクアも水を使って発泡させる「アクアフォーム」(A種3)に加え、HFOを発泡剤に採用した「アクアフォームNEO」(A種1H)を開発。熱伝導率0.026W/m・K以下という優れた断熱性能を発揮する。
「木造住宅でも広く採用頂けるように、防火認定についても先駆けて取得している」(大森課長)としている。

akiresu.jpgウレタンフォームの総合メーカーであるアキレスも、HFOを採用した「アキレス エアロン FR‐FO」(A種1H)をRC造建築物向けに展開している。熱伝導率0.026W/m・Kの高性能を発揮する。木造住宅向けには水を発泡剤とする「アキレス KHフォーム」(A種3)を販売しているが、「今後、HFOを採用した高性能品を木造住宅向けに投入することも検討している」(断熱資材販売部 販売二課 内田清治課長)という。

「ボードタイプと現場発泡の両方を取り扱っているメーカーとして、付加断熱を積極的に提案していきたい」(同)としている。
そのためにも、木造住宅向けにHFOを採用した高性能品を投入したい考えだ。

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断熱性能と環境性能の両立へ
高性能化が進む現場発泡断熱材

材工込みの販売でシェアを伸ばす
施工現場で硬質ウレタンフォームの原液を吹付け、断熱材を成形する現場発泡断熱材。
専任の施工者が現場での施工も行う材工込みの提供により、大工・職人不足が深刻化するなか、工務店などの支持を集め木造住宅を中心にシェアを伸ばしてきた。

(独)住宅金融支援機構が発表している「フラット35仕様実績実態調査」によると、フラット35の設計審査を受けた新築戸建住宅で採用された断熱材のシェアが大きく変わってきている。

壁の断熱材の種類で見ると、2007年度には50.1%と半数以上のシェアを持っていたグラスウールが2012年度には48.7%、25.3%のシェアがあったロックウールも11.0%に減少している。代わってシェアを伸ばしたのが現場吹付けなどの硬質ウレタンフォームで、2007年度は5.2%だったが、2012年度には19.5%と、約2割までシェアを伸ばしている。

経済産業省の資料によると、2014年における断熱材の出荷割合でも、9%が硬質ウレタンフォームの現場吹付け品。断熱材全体でも約1割のシェアを握るところまで伸びている。

戸建住宅向け現場発泡断熱材で最大手の日本アクアによると「2015年は約3万6200棟を達成したが、2016年はさらに伸び4万棟を超えた。材工込みの提供のメリットが工務店などにも浸透してきた」(大森課長)としている。


環境問題への対応からノンフロン化が進む
2015年7月に「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(建築物省エネ法)が公布。2016年4月から段階的な施行が始まった。2020年までには住宅も含めすべての建築物に省エネ基準への適合が義務付けられる予定だ。さらに、政府は2020年に大手ハウスメーカー・工務店等が新築する住宅の過半数がZEHとなることを目標に掲げており、住宅分野ではさらなる高気密・高断熱化が求められている。

現場発泡断熱材については、現在、水を発泡剤に使用するものが主流。2005年の京都議定書の発効により、温室効果ガス削減に向けた施策が強化され、それまで現場発泡断熱材の発泡剤に使われていたHFC(代替フロン)が削減対象ガスに加わった。HFCはフロンと比べオゾン層への影響は少ないものの、温暖化への影響が大きかったからだ。日本でも2015年に施行されたフロン排出抑制法で、現場吹付けウレタン断熱材が指定製品化され、HFCの削減目標が示された。


新たな発泡剤が登場
断熱性能も向上

そうしたなか、現場発泡断熱材業界ではHFCから、ノンフロンを実現する水へ発泡剤の切り替えが進んだのだ。

一方、断熱性能については、建築物断熱用吹付け硬質ウレタンフォームとしてJIS(JIS A 9526)の規定があり、品質基準値で水を発泡剤に使用する製品(A種3)は熱伝導率0.040W/m・Kとなっている。一般的な住宅用グラスウール断熱材とほぼ同等の性能を持つ。

ただし、住宅のさらなる高気密・高断熱化が求められるなか、現場発泡断熱材も、より断熱性能の高い商品が必要になってきた。

そうしたなか、登場したのがHFOという発泡剤だ。ノンフロンでオゾン層や地球温暖化への影響がほとんどないうえ、断熱性能の向上にも寄与する発泡剤だ。

2015年12月にはJIS A 9526が改定され、HFOを発泡剤とした種類(A種1H、A種2H)が追加された。
そのため、現場発泡断熱材の原液メーカーの間では、HFOを発泡剤に使用した商品を発売する動きが活発化している。


現場発泡断熱材に革命を起こす
新発泡剤「HFO」

HFO.jpg現場で硬質ウレタンフォームを吹付ける現場発泡断熱材の場合、発泡剤の果たす役割が大きい。発泡剤はウレタンを膨張させるだけでなく、断熱性能にも影響を及ぼすからだ。加えて、現場発泡断熱材はもともと発泡剤にフロンを使用していたことから、オゾン層や温暖化への影響を抑えるため発泡剤のノンフロン化が課題だった。

そうしたなか登場したのが「ハイドロフルオロオレフィン」(HFO)による発泡剤。オゾン層破壊係数(ODP)はゼロ、地球温暖化係数(GWP)も1と極めて小さい。優れた環境性能が特長だ。また、HFOはウレタンを発泡する際に独立気泡を生成する。発泡剤がウレタンを基材としたセルの中に閉じ込められている状態をつくり出すのだ。

水を発泡剤としたときにできる連続気泡は空気が入れ替わってしまうため断熱性能は限定的だが、独立気泡は空気が入れ替わらず、発泡剤の断熱性能が活かせる。そのため、HFOを発泡剤に採用することで、水を発泡剤に使用する従来品と比べて断熱性能が25%向上する。

「HFOは環境性能と断熱性能を両立した発泡剤」(ハネウェルジャパン パフォーマンス・マテリアルズ・アンド・テクノロジーズ フッ素化学品事業部 松井勝之シニアマーケティングスペシャリスト)なのだ。

日本国内でHFO の供給を行っているのがハネウェルジャパンだ。米国に本拠地を置くグローバル企業で、化学品の開発・製造も行っている。

「世界でもHFO発泡剤の量産化を実現しているのは当社だけ」(同)として、日本の現場発泡断熱材の原液メーカーなどに採用を促進している。
ZEH をはじめ、高性能な住宅が求められるなかで、断熱性能の向上に寄与し、住宅の省エネ化に貢献する発泡剤としてHFOの提案を積極化している。

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法政大学 デザイン工学部建築学科
教授 網野 禎昭 氏

日本の木造住宅でもプレファブ化の流れが加速
部品の複合化により付加価値を付けやすく

大工不足、高齢化問題を背景に、躯体施工の請負サービスが脚光を集めている。さらに現場工事に依存しない木造住宅づくりを目指し、プレファブ化を進める事業者も現れ始めている。こうしたプレファブ化による木造住宅の建て方は、すでにヨーロッパで広く普及している。ヨーロッパの木造建築に詳しい法政大学の網野禎昭教授に、日本の木造住宅のつくり方が今後どのように変わっていく可能性があるのか聞いた。

――ヨーロッパでは、木造住宅の建て方としてパネル工法が普及していると聞きます。

ヨーロッパ、特にオーストリアの木造住宅の分野では、いわゆる柱、梁構造というものは、ほとんどなく90%以上がパネル工法です。一方、日本の木造住宅を見ていると、在来軸組の存在感が非常に大きいと感じます。在来軸組の仕様規定というものがあまりにも社会に大きな影響を与え、広範に根付いているがために、マイナーチェンジしかできないと言ってよいかもしれません。特定の企業が展開するクローズドシステムとしてのプレファブ工法というものは色々生まれましたが、それはあくまでクローズドなものであり、木造住宅のつくり方というのは、そんなに多様化していません。在来軸組で合理化が進んだのは、主にプレカットですよね。


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プレカット材の販売促進へ
躯体施工もセットで提供

住宅・建設業で現場の直接施工を担う技能労働者の人材不足問題が深刻度を増してきている。総務省の「労働力調査」によると、2015年度の技能労働者数は約330万人。このうち55歳以上が約112万人と約3分の1を占める一方で、29歳以下の若者は約36万人と約1割にとどまっており、技能労働者の高齢化が進行していることが浮き彫りとなっている。

とくに近年、木造住宅の施工を担う大工不足が危惧されている。ここでも若年世代の大工就業者が少ないため高齢化が進み、年々減少傾向にある。5年ごとに実施している国勢調査によると2005年に54万人いた大工は2010年には40万人にまで減少。過去最大の14万人という減少を招いた。

今後10年以内には60歳以上の技能労働者、大工の大半が引退する見通しであり、若者入職者の確保・育成が喫緊の課題となっている。

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